2018年5月25日金曜日

三番目の猫


一時期 社宅に住んでいた
大きな声では話せない そのころのお話

ペットを飼ってはいけなかったのですが

ある日のこと
自転車の前にひょっこり出て来た子猫

喉をならしながら
私の足にすり寄ってきました

ゴロゴロといいながら
私を見上げ 目を細めます




誰かに会わないかと
ドキドキしながら
早足で
子猫を抱いて部屋に入りました

「見つかると
ここに居られなくなるから
静かにしてね」

段ボール箱で
間に合わせのトイレを作り
子猫との生活が始まりました

ごはんにしようね と言っても
ヒモを相手に 戦いの踊りをしても
子猫は声を出さないのです

名前を呼ぶと 私を見上げ
目を細めて ゴロゴロと答えてくれます

ああ 声が出ないんだ
でも ちょうど良かったのかもしれないね





それから 約一年後
一軒家に引っ越しして
大きくなった猫を床の上に降ろし
「今日からここがお家だからね」
と言うと
猫は私の顔を見上げ
目を細めて
「にゃあ」
と可愛い声で鳴いたのです 




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